グレリン

グレリン (ghrelin) は、から産生されるペプチドホルモン下垂体に働き成長ホルモン (GH) 分泌を促進し、また視床下部に働いて食欲を増進させる働きを持つ[1]。GHS-R (growth hormone secretagogue receptor) の内因性リガンドである[2]

1999年国立循環器病センターの児島将康・寒川賢治らにより発見された[3][4][5][6]

本稿は、特に明記しない場合、ヒトのグレリンについて記載する。

構造

  • 分子量:3370.9
  • アミノ酸配列:1 GSSFLSPEHQRVQQRKESKKPPAKLQPR 28

28個のアミノ酸からなり、3番目のセリンがオクタノイル化修飾をうける特徴的な構造をもつ。このオクタノイル化によりグレリンは活性型となり、生理活性を示す。オクタノイル修飾がつかない不活性型グレリンをデスアシルグレリンと呼び、血中では大部分がこの型である。

分泌調節

胃での産生細胞は、これまで機能が不明であったX/A-like細胞と呼ばれる内分泌細胞である。胃以外にも、腸管視床下部下垂体膵臓腎臓胎盤精巣などで少量ではあるが産生が認められる。

グレリンは絶食により血中濃度が上昇し、摂食により血中濃度は低下する。肥満者では血中濃度は低値を示し、やせ状態では血中濃度は高値を示す。

生理作用

グレリンは下垂体に働きかけ、成長ホルモン分泌を強力に刺激する。この作用は、成長ホルモン放出ホルモン (GHRH) による成長ホルモン分泌と相乗的である。また、視床下部に働きかけ、摂食を刺激する。グレリンの投与により、体重増加、脂肪組織の増大がみられることから、脂肪細胞が産生する抗肥満ホルモンであるレプチンに拮抗するホルモンであると考えられている。

名称

グレリンの"ghre"は、"grow"(成長)の印欧基語であることと"GH-releasing peptide"にちなみ命名された[2]

参考文献

  1. ^ Inui A, Asakawa A, Bowers CY, et al. "Ghrelin, appetite, and gastric motility: the emerging role of the stomach as an endocrine organ." FASEB J 2004;18:439-456. PMID 15003990
  2. ^ a b 寒川賢治ほか「新しい消化管ホルモン:グレリン:1グレリンの発見とその意義」『BIO CLINICA』2003年、18巻、6号、p486-487
  3. ^ Kojima M, Hosoda H, Date Y, et al. "Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach." Nature 1999;402:656-660. PMID 10604470
  4. ^ 児島将康:「グレリンの発見から臨床応用まで:古き良き発見の時代に」、Journal of Japanese Biochemical Society 95(1): 5-16 (2023).
  5. ^ 児島将康、寒川賢治:「グレリンの構造と機能」、生化学第79巻、第9号、pp.853-867 (2007).
  6. ^ 中里 雅光:「胃から発見された摂食亢進ペプチド:グレリン」、肥満の科学、第124回日本医学会シンポジウム、頁45-52。

関連項目

視床下部 - 脳下垂体
視床下部

GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH

脳下垂体後葉
脳下垂体中葉
脳下垂体前葉

性腺刺激ホルモン - αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMCACTH - エンドルフィン - リポトロピン

副腎
副腎髄質
副腎皮質
甲状腺
甲状腺
副甲状腺
生殖腺
精巣
卵巣
その他の内分泌器
膵臓

グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン - 膵ポリペプチド(英語版)

松果体
内分泌器でない器官
誘導タンパク質

NGF - BDNF - NT-3