コスタリカの石球

コスタリカの石球 コスタリカ国立博物館(サンホセ)における展示

コスタリカの石球(コスタリカのせっきゅう、Stone spheres of Costa Rica)とは、1930年代の初め、コスタリカの密林で発見された石の球体である。現在までに200個以上が発見されている。石球を含む考古遺跡4箇所は「ディキスの石球のある先コロンブス期首長制集落群」の名で世界遺産リストに登録されている[1]

概要

スペイン語でラス・ボラス・グランデス(大きな玉)。石球のほとんどはタラマンカ山地の麓に産する花崗閃緑岩が原料であるが、貝殻石灰岩製のものも少数存在する。大きさは直径2センチメートルの小さなものから、直径2メートルを超える大きなものまでと様々である[2]。最大級の石球は重量にして約25トンである[3]。現在、石球の持ち出しや売買は現地の法律で禁じられている[4]世界七不思議の一つとされておりオーパーツと言われることもある[5]

製作年代について

石球の正確な製作年代やその目的は不明である。発見時に周囲に存在していた遺構の年代より推定して、西暦300~800年にこの地で栄えたディキス石器文化が有力視されている[6]

円の精度

コスタリカの石球

誤差数ミリメートルのほぼ真球であるとする主張もあるが[7]、単なる創作であるとする説もある。直径が箇所によっては約5センチメートル以上異なる球体もあり、また最大級の球体に関しても、のちの焼畑の際の過熱によって、熱せられた表面がかなり崩れているので、本来の形状がどれほど真球に近かったかは既に計測不能である[8]

一方で表面の状態が良好なものも多く発見されており、南山宏羽仁礼らが著した書籍において「米ハーバード大学研究員のサミュエル・ロスラップ博士によって[9]、様々な角度から円周や直径を測っても最大誤差が0.2パーセントのものや、直径が2.0066メートルとミリ以下の単位まで全く同じ大きさの2個の石球も見つかっているという研究報告がある」と紹介されている[10]

石球の配置

石球の配置には規則性があり[11]星座など天体を模しているという説もあったが[3]、石球が持ち出されたり[12]黄金が詰まっているという噂が流れて石球が破壊されたりしたため[13]、今では正確な配置は分からなくなってしまった[14]

ただ、近年の調査で球体の表面に彫刻が残っているものもあり(Carved Sphere と呼ばれている)、彫られた線が星座の図形を現しているという説が提唱されている[15]

作成方法

球体への加工は、石斧や石像を製作した場合と同様に、まず加熱と冷却を交互に繰り返して徐々に表面を崩していき、球体に近づいたところで同種の固い石で表面を何度も叩いて整形し、最後に磨き上げたものと考えられている[16]

日本テレビの『特命リサーチ200X-II』2003年3月9日放送番組での検証で、日本の石材加工業者に依頼して、当時使われたと思われる方法を用いたところ[17]、時間さえ掛ければ真球に限りなく近い石球を手作業で製作できることが実証された。よって「現代でも石を真球体に加工するのは不可能」や、「困難である」とする書籍等の記述は誤りである[18]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ “世界遺産詳解の解説”. コトバンク. 2018年3月30日閲覧。
  2. ^ 並木伸一郎 1998, p. 167.
  3. ^ a b 桐生操 2004, p. 275.
  4. ^ 並木伸一郎 & ムー編集部 2022, p. 62.
  5. ^ 自治体国際化協会 2009, p. 29.
  6. ^ ASIOS 2013, p. 327.
  7. ^ プレック研究所 2022, p. 248.
  8. ^ 朱鷺田祐介 2005, p. 187.
  9. ^ 南山宏 2016, p. 52.
  10. ^ 羽仁礼 2001, p. 151.
  11. ^ 羽仁礼 2001, p. 152.
  12. ^ 桐生操 2004, p. 273.
  13. ^ 南山宏 2016, p. 55.
  14. ^ ASIOS 2013, p. 331.
  15. ^ ASIOS 2011, p. 37.
  16. ^ ASIOS 2011, p. 40.
  17. ^ ASIOS 2011, p. 39.
  18. ^ ASIOS 2011, p. 41.

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、コスタリカの石球に関連するカテゴリがあります。
  • Stone Balls of Costa Rica
  • 並木伸一郎『不思議発掘! 縄文超文明と日本ピラミッドの謎』二見書房、1998年、167-168頁。ISBN 9784576980393。 NCID BA36558483。OCLC 676012536。国立国会図書館書誌ID:000002681548。https://books.google.co.jp/books?id=8c9VDwAAQBAJ&pg=PT167#v=onepage&q&f=false2023年2月26日閲覧 
  • 羽仁礼『超常現象大事典』成甲書房、2001年、151-152頁。ISBN 9784880861159。 NCID BA51412836。OCLC 674959758。国立国会図書館書誌ID:000002997289。https://books.google.co.jp/books?id=aw1KNBN4uPUC&pg=PA151#v=onepage&q&f=false2023年2月19日閲覧 
  • 桐生操『知れば知るほどおそろしい世界史 : 古代文明~中世の暗黒』祥伝社、2004年、273-275頁。ISBN 9784396313531。 NCID BA71844662。OCLC 674679173。国立国会図書館書誌ID:000007429657。https://books.google.co.jp/books?id=aUqfDQAAQBAJ&pg=PT273#v=onepage&q&f=false2023年2月26日閲覧 
  • 朱鷺田祐介『超古代文明』玉川大学出版部、2005年、186-187頁。ISBN 9784775304358。 NCID BA74957494。OCLC 170096871。国立国会図書館書誌ID:000008005338。https://books.google.co.jp/books?id=ZARxDwAAQBAJ&pg=PT187#v=onepage&q&f=false2023年2月26日閲覧 
  • 自治体国際化協会「世界の地域から : コスタリカ共和国」『自治体国際化フォーラム』第232号、自治体国際化協会、2009年、27-30頁、CRID 1522262180528589568、NAID 40016444761、OCLC 5179468844、国立国会図書館書誌ID:9793590、2023年2月26日閲覧 
  • ASIOS『謎解き古代文明』彩図社、2011年、37-42頁。ISBN 9784883927951。 NCID BB07077241。OCLC 752050432。国立国会図書館書誌ID:000011183158。https://books.google.co.jp/books?id=4MRdDAAAQBAJ&pg=RA1-PT37#v=onepage&q&f=false2023年2月26日閲覧 
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  • 南山宏『オーパーツ超古代文明の謎』二見書房、2016年、52-55頁。ASIN 4576161520。ISBN 9784576161525。OCLC 961804132。国立国会図書館書誌ID:027610289。https://books.google.co.jp/books?id=ahTxDwAAQBAJ&pg=PT55#v=onepage&q&f=false2023年2月26日閲覧 
  • 並木伸一郎、ムー編集部『ムー認定神秘の古代遺産』ワン・パブリッシング、2022年、62頁。ASIN 465120225X。ISBN 9784651202259。OCLC 1342148053。国立国会図書館書誌ID:032160294。https://books.google.co.jp/books?id=r-txEAAAQBAJ&pg=PA62#v=onepage&q&f=false2023年2月26日閲覧 
  • プレック研究所『第44回世界遺産委員会拡大会合 (2021年オンライン/中国福州) 審議調査研究事業報告書』プレック研究所、2022年、248頁。ISBN 9784058017166。 NCID BC15196367。OCLC 1332768994。国立国会図書館書誌ID:032114369。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/sekai_isan/pdf/93702401_01.pdf#page=2602023年2月26日閲覧