プルソニャック氏

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1851年に描かれた本作の挿絵

プルソニャック氏』(仏語原題: Monsieur de Pourceaugnac )は、モリエール戯曲。3幕から成るコメディ=バレ。1669年発表。シャンボール城にて同年10月6日初演。

ジャン=バティスト・リュリ作曲、ピエール・ボーシャン振り付け。リュリは作曲だけでなく、医者役でこの芝居に出演した[1]

登場人物

  • プルソニャック…弁護士。
  • オロント…ジュリーの父親
  • ジュリー…オロントの娘。エラストの恋人。
  • ネリーヌ…狡猾な女。
  • リュセット…田舎娘のふりをする女。
  • エラスト…ジュリーの恋人。
  • スブリガニ…狡猾な男。

あらすじ

第1幕

ジュリーは、エラストを恋人に持つが、父親であるオロントからリモージュで弁護士をしているプルソニャックとの結婚を押し付けられている。パリまで彼が出てくるところまで話が進んでいる。何とか破談に持ち込みたいので、悪知恵の利くネリーヌやスブリガニを仲間に引き入れて、計画を企てる。プルソニャックが登場。パリに到着した。非常に趣味の悪い服装をしているので、すれ違う人という人に笑われてしまうが、彼はどうして笑われているのか理解できない。そこへエラストが登場。彼は「リモージュであなたの友人だった」とプルソニャックをだまし、信用させることに成功した。ぜひ私の家へ泊まって下さいと、エラストに誘われたプルソニャック氏は、その厚意に甘えることにしたが、実際に連れて行かれたのは、病人を直すどころか、すぐに死なせてしまうことで有名なボンクラ医者のところだった。わざと死なせているわけではないので、余計に性質が悪いのである。エラストはプルソニャックを頭のおかしくなった患者として引き渡した。医者に浣腸を迫られ逃げるプルソニャック。

第2幕

逃げたプルソニャックに腹を立て、ますます治療にやる気を出す医者。そこへスブリガニがやってきて、オロントのところへ行くように仕向けた。医者はプルソニャックは病人なので、完全に治癒してから結婚させたほうがよいと勧告し、オロントもそれを受け入れた。そこへフランドルの商人に扮装したスブリガニが登場。「プルソニャックは多額の借金を抱えている男で、あなたの娘さんの持参金を返済に充てるつもりのようですし、万が一結婚なんかしたら借金取りがあなたの家にも押し寄せてきますよ」とオロントに吹き込み、その一方でプルソニャックには「ジェリーはこのあたりじゃ貞節のない女として有名ですよ」と耳打ちする。
その策略が功を奏して、オロントもプルソニャックも、結婚の破談を言い出した。おまけに、そこへリュセットやネリーヌが登場し、プルソニャックと婚姻関係があったのに一方的に破棄された、などとウソを言い出した。立場を悪くして再び逃げ出すプルソニャックであったが、虚偽の事実を並べられて頭にきたので、弁護士に助けを求めるも、「重婚した者は絞首刑だ」と言われ、焦るプルソニャックであった。

第3幕

死にたくないプルソニャックは逃げる決意をするが、スブリガニに「誰もがあなたを捕まえようとしている」と言われ、女装して逃げることにした。ことばも女性風にして、良い気になっているプルソニャックであったが、二人の衛兵に言い寄られる羽目になってしまった。さらにそこへやってきた警吏に変装を見破られ、賄賂を要求されるなど、散々な目に遭うプルソニャックであったが、なんとかその警吏のおかげで、無事に街を脱出したのであった。

プルソニャックを追い出すのに成功したスブリガニは、ジュリーとエラストの結婚のために、彼らを巻き込んでもう一芝居打つことにした。ジュリーがプルソニャックを追って家を飛び出したということにして、オロントを不安にさせる。それをエラストが連れ戻すことで恩を売り、なおかつ結婚を認めさせようという計画である。計画は首尾よく実行され、父親のお墨付きを受けて、ジュリーとエラストの結婚は成立したのであった。

成立過程

ルイ14世の狩猟に同行して、モリエールとその劇団はシャンボール城に赴いており、数日間で本作を書き上げた。10月6日にルイ14世の御前で初演を行い、パリ市民にはパレ・ロワイヤルにて11月18日にお披露目された[1]。モリエールが亡くなる1673年までの4年の間に、49回の上演を記録するなど、大好評を博した[2]

ジャン・リブー( Jean Ribou )によって、パリにて1670年に出版された[3]。リュリによる楽譜は、1700年から10年の間に2冊出版されている。1つは、正確な年月日は不明であるが、ルイ14世に仕えていた「アンドレ・ダニカン・フィリドール( André Danican Philidor )[4]」によって、台本を付する形で刊行され[5]、もう1冊はヘンリー・フーコー( Henri Foucault )によって楽譜のみの形で出版された[6]

エピソード

  • プルソニャック( Pourceaugnac )はフランス語で豚を意味する言葉「( pourceau )」とリムーザン地域圏で使われる語尾「( gnac )」の合成語である。

日本語訳

  • 『プールソーニャック氏』川島順平訳、(モリエール全集 第二卷 所収)、中央公論社、1934年
  • 『プール・ソニャック氏』井村順一訳、(モリエール笑劇集 所収)、白水社、1959年

関連項目

脚注

1670年に刊行された本作
  • 「白水社」は「モリエール名作集 1963年刊行版」、「河出書房」は「世界古典文学全集3-6 モリエール 1978年刊行版」、「筑摩書房」は「世界古典文学全集47 モリエール 1965年刊行版」。
  1. ^ a b 筑摩書房 P.456
  2. ^ « Monsieur de Pourceaugnac » [archive], sur cesar.org.uk [archive], César, calendrier électronique des spectacles sous l'Ancien régime et sous la Révolution (consulté le 30 novembre 2011)
  3. ^ Jean-Baptiste Poquelin, Monsieur de Pourceaugnac, comédie : faite à Chambord, pour le divertissement du Roy, Paris, Jean Ribou, 1670, 136 p.
  4. ^ 音楽家、またチェスプレイヤーとして有名だったフランソワ=アンドレ・ダニカン・フィリドールの父親。
  5. ^ Jean-Baptiste Lully et Jean-Baptiste Poquelin, Monsieur de Poursaugnac. Comédie-Ballet. Donné par le Roy a toutte sa cour dans le Chasteau de Chambort au mois d'octobre 1669 fait par Monsieur de Lully sur intendant de la musique du Roy et par le sieur Molliere, 1700-1710, 109 p.
  6. ^ Jean-Baptiste Lully, Ballet de Pourceaugnac, v.1706, 24 p.
戯曲
1645年? 飛び医者 1650年? ル・バルブイエの嫉妬 1655年 粗忽者 1656年 恋人の喧嘩 1658年 恋する医者 1659年 才女気取り
1660年 スガナレル 1661年 ドン・ガルシ・ド・ナヴァール 1661年 亭主学校 1661年 はた迷惑な人たち 1662年 女房学校 1663年 グロ=ルネの嫉妬
1663年 女房学校批判 1663年 ヴェルサイユ即興劇 1664年 強制結婚 1664年 ぼうやのグロ=ルネ 1664年 エリード姫 1664年 タルチュフ
1665年 ドン・ジュアン 1665年 恋は医者 1666年 人間嫌い 1666年 いやいやながら医者にされ 1666年 メリセルト 1667年 パストラル・コミック
1667年 シチリア人 1668年 アンフィトリオン 1668年 ジョルジュ・ダンダン 1668年 守銭奴 1669年 プルソニャック氏 1670年 豪勢な恋人たち
1670年 町人貴族 1671年 プシシェ 1671年 スカパンの悪だくみ 1671年 エスカルバニャス伯爵夫人 1672年 女学者 1673年 病は気から
詩とソネ
1655年 相容れないものたちのバレエ 1655年 クリスチーヌ・ド・フランスに捧げる歌
1663年 国王陛下に捧げる感謝の詩 1664年 ご令息の死に際してラ・モット・ル・ヴァイエへ捧げるソネ
1665年 ノートルダム慈善信心協会の設立を記念する版画に付した詩 1668年 フランシュ=コンテを統治下に収められた国王陛下に捧げるソネ
1668年? ボーシャン氏のバレエのメロディーに付した詩 1669年 ヴァル・ド・グラース教会の天井画を称える詩
1671年? 美しいメロディーにのせた題韻詩
人物と関連項目
マドレーヌ・ベジャール アルマンド・ベジャール マルキーズ・デュ・パルク カトリーヌ・ド・ブリー ラ・グランジュ ミシェル・バロン ジャン=レオノール・グリマレ
盛名座 モリエール劇団 オテル・ド・ブルゴーニュ座 モリエールの医者諷刺 モリエール (列車)
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