虚時間

実時間と虚時間の関係は直交する軸として視覚化できる。

虚時間(きょじかん、imaginary time)は、虚の時間、つまり、単位時間の虚数(純虚数)倍で表される時間である。

虚時間と特殊相対性理論

ローレンツ変換不変量である4次元距離

s 2 = ( c t ) 2 ( x 2 + y 2 + z 2 ) {\displaystyle s^{2}=(ct)^{2}-(x^{2}+y^{2}+z^{2})\,}

で表される。ここでは、時間と空間は対称ではない。しかし、虚時間を τ = i t {\displaystyle \tau =it} と置くと、

s 2 = { ( c τ ) 2 + x 2 + y 2 + z 2 } {\displaystyle s^{2}=-\{(c\tau )^{2}+x^{2}+y^{2}+z^{2}\}\,}

となり、虚時間(の c {\displaystyle c} 倍)と空間との間に対称性が成立する。このため、特殊相対性理論を虚時間を使って記述すると、数学的取り扱いが容易になる。たとえば、ミンコフスキー時空4次元ユークリッド空間となり、ローレンツ変換は回転となる。

虚時間と温度

量子統計力学においては、虚時間は逆温度と融合する[1]。すなわち

Θ := t i 1 k B T . {\displaystyle \Theta :={\frac {t}{\hbar }}-i{\frac {1}{k_{\mathrm {B} }T}}.}

ここで kBボルツマン定数ħ換算プランク定数である。この観点からは、エネルギーの逆数の次元を持つ複素パラメータが現象として現れる際にその実部が時間に、虚部が温度に分かれると考えることが自然となる。

脚注

  1. ^ 新井朝雄『熱力学の数理』日本評論社、2020年、155頁。ISBN 978-4-535-78918-0。 

関連項目


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